オタクから見た「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」
国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO
手塚治虫先生の没年(1989年)以降のアニメ・マンガ・ゲームの歴史を展望するというテーマで、国立新美術館で行われている企画展。 高校生以下は無料なので今すぐ見に行って欲しい。展示は8月末まで。
キュレーションについて
この分野での消費活動歴が10年以上にもなると、展示されている作品は馴染みの深いものが多く、少なくとも名前ぐらいは聞いたことがある作品ばかりだった。とても懐かしい気持ちになれる。 一方で、展示で紹介されていない作品もたくさんあるわけで「どうしてこの作品を選んだのだろう」ということを考えてしまう。他の作品に強く影響を与えている作品や、ジャンルの先駆け的な作品についてはわかりやすいんだけれど。 展示されている資料についても同じで、一作品の数ある資料の中から「どうしてこの資料を選んだんだろう」ということを考えてしまった。
以下、疑問に感じた例。
- 最初の展示である年表に書かれている作品の選定基準がわからない。
- 第1章の「現代のヒーロー&ヒロイン」で、NARUTOがあってワンピースがない。
- 同じく第1章で、七つの大罪、マギ、少女革命ウテナはアニメとマンガで別扱いになっていて、他作品より2倍の展示スペースを使って紹介している。
- アンチャーテッドの動画をプロジェクターで大きく流しているのに、アンチャーテッドの紹介が小さい。PlayStationからPlayStation4までの作品比較動画の一つとして紹介されているだけだった。
- 初音ミクに関して、資料がフィギュア一つのみ、ライブ映像が流れているだけ。
- 艦これに関して、資料がフィギュアのみで、プレイ動画がない。
- 第7章のリアルの問題をテーマとした漫画紹介について、まずテーマ性でカテゴライズして欲しかった。思春期の心理描写が中心の少女漫画、原発問題をテーマにした漫画、スポーツ漫画が混ざっていてわかりにくかった。
- クリエイターがテーマの第8章で、アニメ(ーター)見本市は取り上げているが、なぜアニメミライではなかったのか。
- 全展示を通してガンダムやラブライブ!といった影響の大きな作品が登場しない。
もっと取り上げるべき作品もあったと思うし、必要以上に場所を取り過ぎている資料も多いと感じた。版権が絡んで制約がいろいろとあるんだろうとは思うけれど。
良かった点
歴史的ゲームを実機でプレイできる。シーマンとか。今だとハードを用意するのも面倒になる感じのゲームから、比較的新しいゲームまで、実際に手にとって遊ぶことができるのは大変良かった。
作品の注釈に、関連する他作品が紹介されていてわかりやすかった。
テクノロジーがテーマの第2章とゲームがテーマの第4章は整理されていて展望できる良い展示だったと思う。
悪かった点
動画の質にムラがありすぎる。これが一番残念だった。紹介されている作品によっては高画質なものもあったけど、一番酷かったのがスプラトゥーンで、画質が荒すぎてレトロゲームみたいになってて悪意を感じた。
撮影禁止な点。けいおんの等身大ポップと椅子が展示されていて明らかに記念撮影スポットなのに撮影禁止と書いてあって何のために展示しているのか謎だった。
資料の統一感がない。ある程度統一してプラスαな形にしてほしかった。映像作品だったらBDのパッケージよりも原画やコンテを資料としてほしい。例えばアイカツのバージョン別カード一覧やアイドルマスターの年表なんかは、単一としては面白い展示ではあったけど、全体的な流れとしては見辛かった。
まとめ
オタク的な観点では、資料的な価値が必ずしも高いわけでもなく、体系的に整理されているかというと中途半端な感じだった。
もちろん、自分の視点に高い客観性が備わっているとは思っていない。ただ、学芸員が各作品をどういう位置付けでどこを評価したのかが知りたいと思った。ディスカッションを交わしながら回ると満足感高くなりそう。
- 作者: メディアアート国際化推進委員会
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2015/06/25
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る