君の名は。
君の名は。の感想です。盛大にネタバレを含みます。
ネタバレのない参考
ひとこと
『君の名は。』見ました。これは新海誠作品の集大成ともいえる傑作ではないですか
— ふぃすとー (@fist0) October 1, 2016
青春の戦い
極めて最高でした。「ほしのこえ」から「言の葉の庭」まで全部観ていたから、最高の状態で『君の名は。』を見ることができたと思います。
新海誠作品は青春が敗北する物語だと思っていて、つまりは青春と世界との戦いの物語である*1。
『君の名は。』において、青春は何と戦っていたのか。それは、これまでの新海誠作品で負けてきた世界だと思うんですよね。
『ほしのこえ』で戦ってきた宇宙(今回は彗星)。
『雲のむこう、約束の場所』で戦ってきた夢と記憶。
『秒速5センチメートル』で戦ってきた時間。
そういった世界に、これまでは敗北してきたわけです。どうにもならなかったわけです。 どうにもならないことは仕方なくて、負けても仕方なくて、負けるのは普通のことで、だから仕方ないね、という話だった。
『君の名は。』では、そういった負けてきた世界と戦って、一つずつ勝利していきます。 いや、負けるんですけど。基本的には敗北なんですけれど、でも再戦して勝利するといった感じです。
彗星による敗北は取り返した。 三葉は東京で時間に敗北するものの、瀧から会いに行くことで取り返した。 そして忘れてしまった名前を、最後の最後に取り戻すわけです。それが「君の名は」なんですよね。
運命による救済
片割れ時に、瀧は「この世界のどこにいても君に会いに行く」って言おうとしたけれど、結局自分の力ではどうにもならなかった。 覚えていると思っていた名前は忘れてしまうし、その後「ずっと何かを探している」状態になってしまう。
けれど、最後は偶然にも再会する。再会は運命によるもので、青春を肯定する一つの形だと思います。 これまでの新海誠作品では「青春は敗北するけれど、それは仕方のないこと」という形で肯定されてきたと思っていますけど。
青春は敗北するけれど、でもときどき勝利する。勝利に理由なんてなくて、ただの偶然。 だから青春というものは、自分の力でどうにかなるようなものではなく、運命によって救済されるものだということですね。
理由のないこと
ジブリっぽい要素ですけど、理由はなく「これはそういうもの」という概念が多かった気がします。
この向こう側はあの世であるとか、口噛み酒は半身であるとか、夢は忘れてしまうものだとか、片割れ時とか。 物語の根幹を成す入れ替わりも、理由はなくてただそういうことは起きるものであるというだけです。
ドアが開閉するカットが多様されていていたのも、あっちの世界とこっちの世界の境界線を暗示しているような感じでした。ファンタジー。
RADWINPS
劇中歌の歌詞を読み込むともう少し解釈が広がる気がしています。前世とか関係なかったけど。
まとめ
歩道橋ですれ違ったシーンで終わったのであれば、これまでの新海誠作品と同様に青春は敗北していました。 運命の相手を忘れてしまっても、名前を思い出せなくても、普通に生きていけるよね、って話になるかと思った。
けれど今回は違った。青春がやっと勝てたんだな、って思うと感無量でした。積年の呪いが解けた人も多いんじゃないかと思います。僕は呪いから解放された気分です。
ありがとうございました。
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