Cat of AZ

Non Stop Thinking

シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 感想

公開から1週間ということで。

以下、ネタバレを含む感想です。

私とエヴァ

今回のエヴァの感想は、観測者の文脈を抜きにはできないと思うので、最初に簡単に書きます。

エヴァも旧劇場版もリアルタイム世代ではなくて、新劇場版の序からリアルタイムです。 めちゃくちゃに大好きなファンということもなく、Qを劇場で見てから7年間、序破Qどれもほとんど見返してないです。 考察もほとんど読んでないし見てないです。

でも今回ばかりは絶対にネタバレをされたくなくて朝6時に起きて初回上映を見に行きました。

そんな私から見たエヴァ終劇の感想です。

エヴァらしく

前半は、エヴァらしさ満載のキャラ、メカ、戦闘、演出でした。 VS使徒の大艦巨砲、連射される銃、街に落下する空薬莢、謎の進化を遂げる特化型エヴァ、ウジウジするシンジ、イライラするアスカ、綾波から渡されるカセットプレイヤー。

ずっと使い続けられた記号で安心感がありつつも、 エッフェル塔をそんな風に使っちゃうの〜!?って新しさもあり、 エヴァパイロットではない非戦闘員がプラグスーツを着ていたり、 ろくに服を着ないアスカのえっちな身体がスクリーンを圧巻したり、 エヴァに乗ろうとするシンジをミサトさんが後押したり。

懐かしくも新しい、これぞエヴァという感じのファンサービス精神に満ちた映像でした。

エヴァらしからぬ

エヴァらしさがモリモリ詰め込まれつつも、今回はエヴァらしくないシーンがいくつも出てきます。

田植えに目覚め、感情を獲得する綾波型の初期ロット。

シンジとアスカが終わった恋を打ち明け、対話と和解。

シンジと対話し人類補完計画の全容を語りだす碇司令。

あぁ、もう全部終わるんだなぁ、と気付かされます。

突然のメタ、夢の終わり

マイナス宇宙に入ってから、物語がいきなり急展開し、ひたすらメタな描写が続きます。

特撮の撮影現場のようなセットで親子エヴァの殴り合い。

ミサト家で殴り合うエヴァはサイズの比率がおかしいし、セットは壊れていくし、 舞台裏でプロジェクターに旧エヴァのタイトルが写りながらレイと会話したり、 街のCGが急にポリゴン感のあるチープなオブジェクトになったり、 碇ゲンドウの自分語りが鉛筆で書かれたイラストだったり。

最後はシンジがアニメーションからだんだん原画になり、青い空と青い海が戻ります。

このメタな演出は何を表現しているのか。 1995年から続き2021年になってもなお熱狂を生み出す、謎に満ちた「エヴァンゲリオン」は、全てフィクションで作品で、ここは現実ではない、というメッセージに感じました。

夢から覚めていくような、魔法が解けていくような、そういう感覚でした。

ラストシーン、舞台は突然、現代の宇部新川駅に飛びます。 このシーンで実写が使われていたり、シンジくんが声変わりしたのも、夢から現実に引き戻すための演出だと思います。

カオルくんはどうしてループしてたの? リリスはどうして黒かったの? 人類補完計画ってなに? ロンギヌスの槍ってなに? イスカリオテのマリアってなに?

などなど、いろいろ謎がありましたが、実は答えなんて最初から存在しないんじゃないかと思うんですよね。 当時からエヴァの考察本が出版されてたし、今でもYoutubeで考察されていたりするんですけども。 全部フィクションですから。意味はあっても、答えはなくてもいいじゃないでしょうか。

ハッピーエンド

人並みの幸せもエヴァらしからぬ要素でした。

ミサトと加持さんの子供はエヴァと関係なくいい奴だったし、 トウジが委員長は子供がいて家庭を持っていたし、 アスカの隣にはケンケンがいるし、 ゲンドウはユイに会えたし、 シンジはエヴァに乗ることで世界を救えたし。

そして、シンジはマリと宇部新川で幸せに暮らしましたとさ、という昔話のような終わり。

ハッピーエンドには序から熟成された強烈なカタルシスがありました。

そしてやはり、もう全部終わるんだなぁ、と強く意識させられました。

時の流れ、新世紀

1995年の放送開始、2007年の序公開、そして2021年の今。

始まりから四半世紀、序から数えても14年が経過していて、その時間に思いを馳せずにはいられません。 大きな震災もあり、感染症の脅威もあり、時代は変わってしまいました。

序を一緒に見に行ったのが誰だったのか、思い出すことが難しいくらいに、歳を取りました。

よくわからない状況でエヴァに乗せられるシンジに、当時の若者は共感したと思うのですが、 当時の若者もミサトさんや碇司令の年齢になり、人によっては親になり、シンジくんをエヴァに乗せる立場になるわけです。

歳を取ってしまったけれど、それは役割が変わっていくだけで、決して悪いことではないのだと。 ゲンドウもシンジのように、ウジウジ悩み、世界を巻き込み、周りに迷惑をかけてもいいのだと。 28歳になったアスカは14歳のガキシンジとわかりあえるのだと。そう思います。

こんなエヴァは見たくなかったと、心地のよい夢から冷めてしまった人も当然いると思います。

しかし僕は、今を生きる上で希望的な終わりであったと思いますし、最高の終劇でした。

追伸

この文章は宇部新川で書きました。

宇部新川駅3番線ホームにて撮影